自然界の掟
厳しい競争を通して死んでゆく植物は、横浜国立大学のグラウンドの片隅、1平方メートルの調査区で1960年代後期に調べた古いデータからわかります。
これによると、1日平均69本の割合になっています。
移動能力のない植物は、もっとも適応能力の幅が広いはずです。
・・・にもかかわらず、その植物が、わずか1平方メートルの枠内の雑草群落で、1日に69本、10ヵ月に2万700本も枯死していくのです。
いかに彼らがきびしい競争に耐え得て、生きのびているかということがわかります。
さて、ここで植物の世界とはいえ、現代の人間社会のような多層群落の森林の中で芽生えた幼苗には、どのような生き方が強いられているのでしょうか。
多くの場合、高木層が勢いよく繁栄しています。
しかし、その林床に出てくる1平方メートルに何十本、何百本という芽生えは、大部分は高木の被圧のもとで枯死してしまうのです。
また、彼らがどんなにがんばっても、いきなりその空間の優占木になることはできません。
しかし、その多層群落の森林内に芽生えた植物の一つの種子も、がんばれば次の世代の優占木になりうるかもしれません。
しかし、そのやり方は、今あるままいつまでものんびりとして生活していたり、単に下生えのままでじっとがまんしているだけでは無理です。
まず着実に育つこと、しかもバイタリティーを貯えて亜高木層でがまんします。
植物の世界でも、50年、100年、300年と経っていく間に必ずその空間を優占した高木にも寿命があり、ある日突然倒れます。
その高木が倒れたとたんに、ともかく早く大きくなってその空間を優占する・・・
いわゆる君子豹変した樹木が、次の世代のその空間の優占木となりうるはずです。
これが、次の世代の樹冠を形成する高木になるための自然界の掟なのです。